2010年06月05日

セルフワーキングの悩み

いいなあ、iPad。東京に行ったついでにヨドバシで実機に触ってみたけどいい感蝕。「重い」というレビューを見るが、私は気にならないレベル。これなら鞄に入れて持ち歩いてもいいと思った。思いつく使い方は、マジック関係の本をPDF化して、全部iPadに入れて読むというもの。検索機能もあるようだし、かなり便利じゃないかと。何より本棚が片付くのがよい。PDF化については自分でやる方法もあちこちのページで紹介されているが、機材の準備、手間を考えると有料サービスが無難ではないかなと思う。例えば、BOOKSCANスキャポンとか。後者はAmazonで買った本を直接PDF化してくれるのでこちらから送る手間とかなくて便利かも。PAYPALで支払うので、アカウントが必要だが。やっぱり人気あるらしく、現状新規は受付けてないとか。みんな考えることは同じか。
あとは、動画。山積みになってるマジックのDVDをチャプターで分割してエンコードしてiPadで見れるようにすれば便利そう。PDF化した本もそうだけど、あちこち探すことなく、iPadにすべて入っていれば探すのが楽。まあ、動画については保存できる量に限度があるだろうし、全部とはなかなかいかないと思うが、気軽にさっと起動して、さっと見れるメリットはでかいんじゃないかと思う。
今は品薄だし、色々な環境が整うのはこれからだと思うので、しばらくは様子見のつもりだが。上記の目的だけなら、iPad以外の物も出るかもしれないし。

さて、今日はちゃんと(?)マジックの話を。セルフワーキングトリック大好きなんだけど、ときどき悩まされることがあるので、その辺りの話をちょっと。
例として、以下の動画を見て欲しい。「EXCHANGE POKER」というNick Trostの作品である。見れば分かると思うが、簡単に現象を補足しておくと、ギャンブリング・デモストレーションで25枚のカードを使い、5人に5枚ずつ配る。ただし、途中で、1人1回ディーラーのカードと自分のカードを交換できる(逆に1人1回必ず交換しなければならない)。2回はダメ。動画では交換した人がわかるようにコインを置いてマークしている。後は動画の通り。

さて、問題はこれを見た感想である。見たときはかなり不思議に見えた。誰と交換するかはフリーチョイスなのに、ちゃんといい役が出来ている。
が、しかし、自慢するわけではまったくないが、私は10秒ほどで、あることに気がつく。で、「えーと、つまり、こういうことで…」と1〜2分ぐらいで、このマジックの基本原理(というかサトルティというか)に気がつく。で、実際に25枚のカードでセットを組んで試してみて、「あ、できた」状態になったのはたぶん、5分後ぐらいだったと思う。
問題はここから。なぜ私はこのマジックのタネに気がついたのかという点。マジシャンのみが持つ知識によっているのであれば、問題はなく、非マジシャンには不思議に見えるであろうということ。そうではなくて、単にそれなりの記憶力と、論理的分析力と、洞察力があれば、マジックの知識がなくてもタネにだどりつけるなら、少なくとも私と同程度の能力のある人には通用しないマジックということになる。
演者の力量に依存する部分があることはわかっているつもり。この前の取り上げたサイレント・ランニング(日本語版)なんかもそうで、「何をどうやって最終的にカードを当てたのか」をしっかり記憶する能力があって、論理的に逆算できる人には通じないマジックだと思う。だから、そういうことを考えさせないように演出・言い回しを工夫する、記憶をいい感じに混乱させる(都合の悪いところは印象に残らず、都合のよいところを強く印象に残す)、といった演じる上での工夫が必要であろう。
しかし、「EXCHANGE POKER」については、そういうメンタルマジック的対処方法で、印象の操作をするのは難しい気がする。論理的思考が得意な人は「どうカードを配ったか、どう交換したか」に間違いなく意識がいくと思う。どれだけ「入れ換える人は自由に選びましたね」と強調しても。むしろ、強調することで「なぜ、それでうまくいくのか」という方向に思考がいきやすそうな気がする。
私は、一応マジシャンで、色々なマジックの手順を知っているし、この手のマジックの手順も当然いくつか知っている。だから、タネがわかったと言えなくもない。が、一方で思考の過程で、マジシャンしか知らない知識を使ったかと言われると、ちょっと自信がない。
だから、このマジックがどの程度不思議に見えるのか自信が持てないのだ。これが「セルフワーキングの悩み」。このブログによく登場するうちの会社の同僚はことごとく、セルフワーキングの原理を見破ってきた。しばらく考えて、「こうすればできるんじゃ」と再現されてしまったことが何度あったことか。
セルフワーキングトリックは私は強力なトリックであると思う。秘密の動作がないので、観客は疑うべき点すらないのだから。一方で原理のみで成り立っているわけで、原理に気がつかれるとそれで終わり。そこが難しい。

また、現象の分かりやすさと、原理の複雑さのバランスも難しい。より不思議で複雑な原理は現象も複雑になりがち。
そんな中、私がレパートリーにして好んでやっているのはセルフワーキング・マジック事典 に収録されている「ごちゃ混ぜ予言(Ludow's card Trick)」である。Ali Bongoのトリックである。Simon Aronsonの「Shuffle-Bored」の原理を使っていて、現象は非常にわかりやすく、ユーモアもあって、知らないとマニアも不思議がらせることができる(実際、何人か不思議がらせたことがある)。リセットもさほど難しくないし、一時期はトリネタとしてよくやっていたものである(そう言えば最近やってないなあ。予言の紙どこ行ったかなあ)。
他にはBob HummerのCATO(Cut And Turn Over)の原理を使ったマジックもよくやる(CATOが何の略が調べようと「ボブ・ハマー CATO」で検索したらこのブログが3つ目にヒットしてちょっと驚いた(2010/6/5現在)。まあ、おかげで調べがついたんだけどね)。テンヨーのプラスワンキャンペーンの1つ「マジカルバーガー」がこの原理を非常にうまい演出で使っていてお気に入りのマジックの1つである。他にもCATOを活用したマジックはレパートリーに入っている。ばれににく、現象がわかりやすくて便利。とは言え、一度、会社の同僚に見破られたことあるんだけどね。
他には「ギルブレスプリンシプル」を使ったマジックもわかりやすくて、バレににくて好き。マニアもよく理解してない人なら引っ掛かる。セットアップが面倒なのが多いが、そこは程度問題で、手順の中で、セットアップしてしまうようなマジックもあったりして、便利な原理である。

で、話を戻して、こうした、よくできた原理を使ったセルフワーキングトリックなら、まあ、心配なく演じるんだけど、冒頭の「EXchange Poker」みたいなのは、どうにも微妙で、どこまで通用するのか不安を感じてしまう。見せる相手を間違えなければ、まず通じると思う。が、初対面の人にマジックをやる機会もあるので、そういうときには微妙だなあという気もする。

まあ、「このマジックは通用するか?」というのはセルフワーキングに限らない悩みではあるが、セルフワーキングはいくら鏡の前で練習しても、あまり意味はなく、バレるときはバレてしまいどうしようもないという他のマジックにはないリスクがあると思うんだよね。
見てわかる通り、メンタルマジックでよく使われていて、メンタルマジックの演出でカバーできる部分は大きいとは思うけど、Pokerとなると話は別なので、今回、悩んでしまっているというのもある。

この手の悩みは「やってみるのが一番」ではあるのだが、ある人に通じたからといって他の人に通じる保証はなく、観客がどういうタイプの人か見極めて、演目を選ぶ、そういうスキルが重要なのではないかと、ここまで書いてきて思った。まあ、結局それも「やってみるのが一番」で経験積むしかないんだけどね。
しかし、セルフワーキングの本、数冊あるけど、ほとんど記憶に残ってないね。読み直してみないと。きっと新しい発見があるはず。

posted by shadow at 11:01 | Comment(15) | TrackBack(0) | マジック(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この原理、それなりに鋭い人なら気付くでしょうね。
少なくとも動画のように同じ原理を二回続けて演じてみせるべきではないと思います。
私なら他のポーカーデモンストレーションの手順と合わせて一回だけ組み込みます。
使用する原理の順番をよく考えて上手に組み込みさえすれば秘密に気付かれるリスクはかなり少なくなると思います。
まだ思い付きですが、まずはノーチェンジのポーカーデモンストレーションから始まって次は普通のチェンジ、そしてこの変則チェンジを行なって最後は表を見せながらのチェンジみたいな感じで。
Posted by RUNE at 2010年06月05日 15:16
やっぱり、鋭い人には厳しいレベルですかね。アイデアとしては非常に面白いと思うのですが。
ギャンブリングデモストレーションは、まだ、レパートリーが定まってなく、どこかで見かけるたびに「これはどうだろう」と悩んでみるのですが、納得いく手順、ルーティンが構成できてないです。
まあ、「セットは最小限にしたい」とかわがままなことを思っているからというのはあるんですけどね。
RUNEさんのおっしゃる通り、この「EXCHANGE POKER」も手順の中に入れるとかなり不思議に見えるので、どういうルーティンにすると組込めるか考えてみたいと思います。
Posted by shadow at 2010年06月05日 18:14
ふふふ、全然わからないボクが通りますよ(w
うわー、不思議、スゴいすごい!
良かったですよ、自分は勘が鈍くて(www
Posted by きーた at 2010年06月06日 00:15
私も見たそのときは不思議に見えたので、きっと不思議なマジックなんだと思いますよ。
ただ、あることに気がついてしまうと、そこから芋蔓式に正解に辿りつけてしまうという弱点があって、やっぱり、単発で、しかも2回連続は厳しいのかなあという気がします。もちろん相手次第なのですが。

でも、やっぱり「マジシャンならではの思考」が入っている気がしてきました。マジシャンは「手順上の制約」に意味があることを知っているからです。無意識の内にそこを手掛りにして考えていたような気もします。演出をうまくやると、その制約は不自然ではないので、通用する範囲は、今私が思っているより広いような気がしてきました。

うちの会社の同僚に見せて気がつくかどうか試してみたいのですが、最近忙しくてそれどころじゃないんですよねえ。
Posted by shadow at 2010年06月06日 01:23
私はshodowさんほどカンが鋭くも無いので不思議ですねえ。
とはいえ、仰る通りこの手の作品は「頑張れば辿れる」とは思います(私の場合はよく考えたり実際にいじらないと分からないですが)。都度、全部交換ということ自体がカードの移動状況を分かりやすくしていたりしますしね。
動画ですから何とも言えませんが、実際に見せられたらにおいは感じるかもしれません。「もしかしてこういうことかなあ」くらい。ただ、一度見たくらいでははっきりとは看破出来ないんじゃないでしょうか。
Posted by きょうじゅ at 2010年06月06日 05:24
私もさすがに見たそのときはかなり不思議に見えたんですよねえ。本当に「あることに気がつくかどうか」がすべてですね。それに気がつかず、辿ろうとするとかなり難しいと思います。
いや、辿ろうとしたそのときに、「それ」にはすぐに気がつくかな?
辿ろうとするときに、「どの順番で交換したかなんて覚えてないよ」とか「どの順番で交換してもうまくいくんでしょ?想像もつかない」と思ってもらえれば、大成功で、問題なしなのかなと思います。
こうして、コメントもらいながら考えて「たいていの人には通用するトリック」と言っていいような気がしてきました。RUNEさんのおっしゃる通り、ルーティンの中で見せるのが安全でかつ効果的だとも思いますが。ルーティンの中で見せるとなると、このセットをどうやって維持するかですね。

Peter Duffieの「BACKFIRE POKER」辺りは検討の余地があるかもしれませんね。残念ながら動画が見つかりませんが、マニア的には「10カードポーカー」のように見えて、そうではないところがマニア心をくすぐります。演出的に「イカサマ師はカードを自由にコントロールできる」という雰囲気に持っていけるので、「じゃあ、こうしましょう」と話を展開できるかなと。ただ、1対1のポーカーから5人のポーカーに急に持っていくのは演出、話術が必要でしょうね。
考えるとなかなか面白いですね。もっと考えてみます。
Posted by shadow at 2010年06月06日 08:43
若輩者が何を言うのかとなりますが、一言。

マジックとして何が不思議なのかぜんぜんわかりませんでした。(涙
Posted by E at 2010年06月06日 20:13
このマジックがまったく不思議に見えないというのも、かなり重症ですね(人のことは言えませんが)。
適切な演出ができれば、結構不思議なマジックだと思うんですけどねえ。
Posted by shadow at 2010年06月06日 20:38
こんにちわ、sadowさん。
私は全くだめです。(すぐ分かっちゃいました)
同僚氏には通用しないに3000点賭けますw
そして普通の人にも今ひとつ不思議さが弱い気がするんです。

逆にマジック好きで原理を考えようとして、盲点に入ってピンとこない場合が一番不思議さを感じるのではないかと思います。
* きーたさん、きょうじゅさんはここに該当されるかと思います。

論理を追おうともしない方(多くの普通の方はそうじゃないでしょうか)は
「よくわからんけど、そういうセットになってるんだろ」という感じだと思うのです。
* 全くできそうにもないという感じがないので
* 色々計算させて最初に思った数字を当てるマジックみたいな感じがします。
不思議さが薄い感じがします。

PMやカクテルセレクションやフォーチュンスティックの方が良いと思うのです。
* シンプルなので分からない人には不思議ですよね
あと「プリディクト・パーフェクト」は分かる人にはすぐわかるけど、とても良いマジックだと思います。
sadowさんの言われる現象の分かりやすさと、原理の複雑さのバランスが私好み。
フォースをしないVerを最初に見せた場合は、同僚氏でさえもすぐには分からないのではないかと思ってます。

ただ、これもこのマジック単体を見た場合であって、原理と言うかサトルティは色々応用できそうですし
皆様が言われるように、上手いマジシャンがルーチンに組み込んだ場合は十分面白い気がします。(私も学習しました)

あと演者の方にはとても失礼ですが、演技はとても参考になりました。
「シャーリエシャッフルはやりすぎると凄く怪しい」

「ごちゃ混ぜ予言」大好きです。素晴らしい原理・マジックですよね。
こちらは、同僚氏にも通用するに3000点w
これ、オン研の宮崎OFF会(2人しかいないけど)で演じようとしたら、先にやられましたw
数少ないレパートリーだったのに。

残念ながら私は先にタネを知ってしまったので、どれほど不思議に感じるかは今一つピンときませんが、
相当に頭がよい人でもすぐに気が付かれることはないと思ってます。
ギルブレスプリンシプルもお気に入りの原理です。
shadowさんの好みのマジックはとても参考になります。

あるマジック名でグーグル検索すると、このブログが上位に来ることはよくある事です。
時には販売元等を差し置いてトップにきますw
Posted by ゆうゆう at 2010年06月07日 15:30
shadowさんのお名前を2度も書き間違えました。
申し訳ありません。
Posted by ゆうゆう at 2010年06月07日 17:59
やっぱり、通常の(?)イカサマテクニック等見せた後、「でも、こうやって、好きに交換すれば、自分のところに都合よいカード配れなくて、イカサマが防止できるわけです」みたいな流れをつくらないと、このマジックの現象そのものが活きないし、原理を隠すのも難しいということなんでしょうね。皆さんのご意見うかがって、私の頭の中も整理されてきた気がします。

> 「シャーリエシャッフルはやりすぎると凄く怪しい」
まったく同感です。動画は明らかにやり過ぎですね。パケットでは便利なので、シャーリエシャッフルはよく使ってますが、この動画はちょっとひどいなと思いました。

カクテルセレクションやフォーチュンスティックは相手を選ぶなあと思ってます。と言いながら、カクテルセレクションは結構演じてますけど。でも、うちの会社の同僚には通じない自信があります。

「ごちゃ混ぜ予言」は名作だと思います。私自身、なぜそうなるのか原理を理解するのに結構時間かかりましたし。演出も面白いですしね。
せっかく思い出したことだし、チャンスがあればやってみようと思います(予言が見当たらないので、印刷しないと…)
Posted by shadow at 2010年06月07日 22:02
>この動画はちょっとひどいなと思いました。
セリフ等は落ち着いていて安定感があるんですけどねえ。
私はこの方より多分かなり下手なんで文句を言うのも可笑しいですけど。。。

もうひとつだけケチをつけるとw
シャッフルのあとフェイスを見ながらカットして並び替えるのが個人的には気に入りません。
(演技が堂々としているので問題ないような気もします。いやみでなく良い度胸してます。)
私なら
1.マークドカードを使う
2.ペンシルドットをキーカードに使う。
3.一目はそうは見えないバックがワンウェイカードをひっくり返しキーカードに使う。
のどれか(多分3)を採用して、
キーカードがトップにきたところでシャッフルを止めます。
5枚毎(計5枚)に該当キーカードになるセットができるはずなので難しくないと思います。
shadowさんにとっては釈迦に説法でしょうが、ご参考までに。
Posted by ゆうゆう at 2010年06月08日 17:00
その部分については、正確に聞き取れてませんが「ジョーカーが入ってないか確認」という、まあ、これもよくある手ですが、これはこれでありかなと思います。
私なら、同じように堂々と表を見てカットするか、1枚マークドにするか、コーナショートカード1枚入れるか、フォールスシャッフルにして、状態を保持したままにするかどれかかなあという気がします。
Posted by shadow at 2010年06月08日 21:55
そこがプロとアマの差ってやつですよね。

つまり演出する能力があるかどうか。

一番いいのはセルフワーキングをやったあとにすぐ普通のマジックをやることが重要。

考えさせる時間を与えるながとても大事だと思います。
Posted by ごごご at 2013年11月08日 09:04
コメントありがとうございます。

なるほど、「考えさせる時間を与えるな」は対策として有効そうですね。
ただ、この手のマジックの場合「不思議さを確認する時間」も必要だと思うのです。そうしないと何が不思議かよくわからないまま次のマジックに入ってしまい、最悪の場合、演じた意味がない状態になる可能性もあると思うのです。
とは言え、おっしゃる通り考えさせ過ぎるのもよくないと思うので、そのバランスを取るのが難しいのかなとか思いました。
Posted by shadow at 2013年11月08日 21:16
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。